南横山線
秘境温泉、霧鹿峡谷の大自然の造形
中央山脈を横切る南横公路は、普段は車は多くありません。通行するのは山間の原住民部落の住民、高麗菜を栽培する農家の人、さらに登山と温泉を求めてやってくるこだわりを持った旅人だけです。
曲がりくねった道 標高差が描き出す絶景
南横の東側の水害で損傷した部分はほぼ復旧しています。入口は台九線。そこから海端鄉へ入った後、新武呂溪沿いの曲りくねった台20線を、海抜300mから2700mの埡口セクションへ上っていきます。大関山トンネルを越えると、被害が最も深刻だった高雄セクションです。南横の東側は低海抜の広葉樹林からニヨウマツ、ゴヨウマツが密生する高海抜針葉樹林へと景観が大きく変化します。行楽客が多くないため、目の前を横切るヤマムスメ、キエリテンに会えるかもしれません。
霧鹿峡谷
南横で最も有名な景観です。霧鹿溪の浸食で、人間業とは思えないほど雄大で見事な霧鹿峡谷の断崖絶壁が生まれました。かつて路面から20m以上離れた渓流には、澄んだ水が流れていましたが、2009年の台風8号によって運ばれた大量の土砂が溪谷を埋め尽くし、現在霧鹿溪の水は濁っています。河床も10mも上がりましたが、豊かな温泉の源泉を埋め尽くすことはできませんでした。今でも溪谷のあちらこちらで白い湯気を上げ、霧鹿温泉の健在振りをアピールしているようです。
嘉明湖
南横に向かう登山愛好家の目的の一つが、天使の淚と呼ばれる嘉明湖です。嘉明湖登山道は、向陽森林遊楽区からの登り道で、三泊二日の登山ルートになります。台湾百名山に数えられる向陽山と三叉山を越えなければ、標高3310mの嘉明湖を目にすることはできません。流れ込む川がないのに、水が涸れることのない嘉明湖は、每年延べ一万人余りの登山者を惹き付けています。嘉明湖登山道は台湾で最もホットな高山步道なのです。
温泉
南横の東側は温泉が多く、霧鹿温泉以外にも、かつて農民、労働者の休息、足湯のために作られた六口温泉、さらに上には碧山温泉、徒步でなければたどり着けない栗松温泉、轆轆温泉等があります。温泉資源が非常に豊かなのです。栗松温泉は南横摩天セクションにあります。温泉が上方から流れ落ちているため、山肌に堆積した鉱物質の結晶がカラフルな岩壁を作り、最も美しい野湯と呼ばれています。栗松温泉へ向うには、先ず山道をくねくねと車に揺られなければなりません。さらにその後は徒步で溪谷へ下り、険しい山道を一時間ほど歩き、両足の疲れがピークに達した頃、ようやくひんやりした水が流れる渓流にたどり着き、こうしてやっと栗松温泉に浸かることができるのです。けれども、栗松温泉の美景を堪能し、温泉で心身ともに癒された後は、再び山道を一時間以上歩き戻らなければなりません。それでもやはり、苦労を厭わず多くの人が訪れています。
栗松温泉
山を登り渓流を遡り、少なくとも一時間かけなければ、たどり着くことはできません。峡谷の岩壁をキャンバスに自然はカラフルな絵画を描いています。緑の苔、鉄分の酸化等が原因で、褐色、緑色、灰黒色が混じりあった自然の芸術が見られるのです。彩り鮮やかな岩壁が縁取る乳白色の温泉、緑の木々、勢いよく落ちる温泉水の滝。「台湾で最も美しい野溪温泉」との美称にも納得です。